中学入試に出る不幸な物語

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白と黒

家庭教師のタツジン28号です。

 

今回もE光学園の問題の問題を解説していきます。中学入試特有の不幸な話です。中学受験で、なぜこのような不幸の話ばかり多いのか。やはり、登場人物の立場で物事を考えられる想像力を試されているのでしょう。言い方を換えると、中学入試でこのような問題が出題されるということは、現代の日本社会に生きる子どもたちの感覚そのものが鈍っているからなのでしょうか。平和で物質的に豊かではありますが、人の痛みを想像する機会が減っているのかもしれません。

 

 さて、物語のあらすじです。外国のお話です。小学校5年の女の子が主人公です。新しく引っ越した先で買い物に出かけた父親が交通事故に遭い急死します。女の子は父親が大好きで、その死をうまく受け入れられません。6才の弟を連れて以前住んでいた家に行きます。そこに行けば父親に会える気がしたからです。家に行って弟がいいます。パパはいないじゃないか、と。女の子は弟に車で殺されてもここにいると言いながら、父親の死を認めてしまい震えます。でも、あなたのパパはいつも側にいるという父親の友人の神父の発言を頼りに、愛する父親は近くにいると思い続けます。弟と裏庭の木に行きます。その木に父親と女の子名前が彫られハートで囲んである刻みをみつけます。その刻みを見ながら父親との思い出に浸っていると、弟が自分の名前も刻んでほしいと姉に頼みます。面倒くさく思いますが、近くで父親に見られているような気がして彫ることを承諾し彫ります。姉は木に登ると弟に言います。弟も登ると言いますが、上から引っ張れるほど力がないと、パパが言いそうな優しい言い方をします。

弟は待っているというところで話が終わります。

 

【問題】

選択肢も合わせて6問ほどですが、この物語のテーマをとらえている問題に焦点をあてます。最後の弟も木に登りたいという場面で、「パパが言いそうな優しい言い方をした」理由は何かという問題です。

 

【解説】

 ぼくたちも、身近な人が急死した場合の対処方法は全くわかりません。葬式などの形式的な手続きは業者さんに任せることが出来たとしても、亡くなった人との別れに対する心の落ち着け方は分かりませんし、誰も教えてくれません。以前、A布中に出題された重松清の小説「タオル」とテーマが似ています。肉親が亡くなったときの子どもの心の処し方ということになります。「タオル」は男の子でしたが、この話は女の子です。

 さて、問題を考えてみましょう。父親の知り合いの神父さんに教えられたこともありますが、女の子は、優しい父親が遠くにいくはずがないと思います。そう思いたい気持ちがあるのと同時に父親が自分に優しくしてくれたことを思い出すはずです。父親と自分の名前を裏庭の木に刻んだときは、弟が生まれたときで自分がみんなから疎外されていると思っているときです。この木は、亡くなってしまった父親との思い出の場所であり、父親の代わりということが出来ます。女の子が木に登るのは、父親に抱かれるような思いにつながるのでしょう。弟も登りたいといいますが、女の子の力ではムリでしょう。でも、弟の気持ちは痛いほど理解できるでしょう。悲しい思いをしているときに、父親が自分に優しくしてくれたように、弟が悲しい思いをしている心を汲んで、父親のように対応してあげようとしているということでしょう。

 

【解答例】

自分が悲しい思いをしているときに父親が優しく接してくれたように、悲しい思いをしている弟に対して優しく接しようと思ったから。

 

 このような物語のようなことを普通の小学生が経験することは、あまりないと考えられます。でも、他人の痛みを感じる繊細な心を受験生に求めていることは間違いありません。身近に不幸なことが起こらなくてもニュースを見る限り、世界中には戦争や地震、凶悪犯罪などの悲惨な事件が後を絶ちません。たくさんの一般人が巻き込まれ、その家族が悲しい思いにさらされているに違いありません。そういったニュースなどで、保護者の方が子どもたちと話し合う機会をもたれるのがよろしいでしょうか。

 

結論

①家族を亡くした子どもがテーマとなっている物語が出題されることは普通にある。

②家族を亡くした子どもの心に寄り添う想像力を求める問題が出題されている。

③ニュースなどを通じて、被害者の心に寄り添ってみることも大事だと考えられます。