木工少女

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伐採されたスギ

家庭教師のタツジン28号です。

 

 今回は、濱野京子さんの「木工少女」を出題したT中学校の過去問を取り上げます。子どもたちに国語を教えてずいぶんになりますが、ときどき何のために教えているのだろうと、ふと立ち止まって考えることがあります。いい中学校に行くため?いい大学に行くため?いい会社に勤めるため?そういう言葉をよく聞きます。ぼくも、そうなんだろうなぁとも思います。

 でも、中学入試問題に長い間向き合っていると、それだけではない気がします。その先に何があるのか、人それぞれかもしれませんが、人が人として生きる上でこんなこと分かるといいよね。君たちは分かるかな?学校の先生方は、そんなことを考えて作問しているのだろうとは思います。今回の物語も、その延長線上で考えてみました。

【あらすじ】

小学校6年生の立石美楽(みらく)は、小学校6年生の女の子です。父親の都合で1年限定でコンビニもない山村で暮らします。消極的で人づき合いの苦手な美楽は、山村生活でイライラを募らせていきます。木工所に出入りすることで心を落ち着けていきます。美楽は高校三年生の山田と出会います。山田は、進学希望もあったが地元で林業の仕事に就くことに決めます。彼女は、山田と話をするときに乱暴な口調になります。二人は散歩をします。山田は生まれ故郷が好きな話をしますが、それを聞いた美楽は、自分が生まれた練馬の光が丘団地を思い出しますが、何とも感じません。山田はスギ林の話をします。輸入材が増えて林業は厳しいけれど、自給率を高めたい。勉強は大学だけでするものではない。スギは50年くらいで生長する。そこまで育てるには、地拵(じごしら)えから始まって、植林、下刈り、除伐、枝打ち、間伐などいろいろ手を加えないといけない。自分が植林した木は自分で伐採できない。話を聞いた美楽は、ふと幹に触れ、耳を近づけます。山田は言います。呼吸しているだろう。数年経つと、じいさんが植えた木をおれが伐採する。オヤジが植えた木をおれが手入れをする。枝打ちして立派な木材にする。おれの植えた木を子どもか孫が切ったりして。山田はにやっと笑って美楽の頭をぐりぐりとなでた。やめろ、髪が乱れるじゃないか。せっかくちょっとだけカンドーしたのに。

【問題】

「ちょっとだけカンドーした」とあるが、どのようなことに感動したのか説明しなさい。

【解説】

ぼくは、想像力が欠落しているのか、何代にもわたって仕事を引き継いでいくという想像があまりできません。代々引き継ぐ仕事が、現在、どれほどあるでしょうか。第一次産業は代々受け継いでいくのがこれまで普通でした。でも、現代に生きる子どもたちが、喜んで農林水産業を受け継ぐという話をあまり聞きません。親も積極的に継がせたいと思っているか分かりません。

そんな今に生きる山田は、地元に残ることを選択します。苦渋の選択かもしれません。輸入材に押されて、林業が廃れていくことを危惧し自給率を高めていくことに燃えます。ただ、自給率を高めるためには、山田の説明に従えば何代にもわたって協力し合わなければならないということが言えそうです。気が遠くなるほどの年代が必要です。ぼくたち日本人の意識も変わっていかなければなりません。都心に人が集まり、地方が衰退していく現代の世の中で、山田の考えを発展させるためにはまだまだ課題がそれこそ山積みになっているといえるでしょう。高校三年生の山田だからこそ、いろいろなことが見え始めているのだろうと思います。都会から来た美楽は、年齢的な意味でも、これまで過ごしてきた生活環境においても、山田が言おうとしていることを想像することは困難でしょう。言い方を換えますと、熱い思いで語る山田に心を動かされながら、その実態については理解が困難であるということが出来るということです。

【解答例】

 山田のいうことを十分に理解できたわけではないが、地元の林業の発展を願う若者らしい生き方を模索し、それを熱く語っていること。

 

農林水産業   #日本の未来   #若者の未来