しろばんば

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シイタケ

こうへき、です。

 

 井上靖先生の「しろばんば」を出したS中学の問題に触れたいと思います。「しろばんば」は、ぼくの大好きな作品のうちの一つです。このあと「夏草冬濤」、「北の海」と続く、井上先生の自伝的小説です。いつもは、作者に対して「さん」づけなのに、井上靖さんには先生をつけることをお許し下さい。ぼくにとって彼は憧れの人で、とても「さん」付けする気になれません。はっきり言って、差別ですけど。 

 「しろばんば」は、主に井上先生が伊豆の天城山ろくに住んでいた幼少のころのことを題材にした小説です。初めて読んだのは30年以上前ですが、長編小説なのに、まるで童話を読んでいるようでした。うっとりして読んだ記憶があります。子どもたちの心を、このように透明感を持って描くことの出来る作家に出会えたことは、ぼくにとって幸せでした。井上先生の作品にはまりました。「夏草冬濤」は、沼津にある旧制中学に通っているころの話です。これもおとぎ話のような気持ちにさせられました。「北の海」は、井上先生が旧制高校受験のころの話でした。井上先生のように頭は良くありませんが、青春時代を振り返っているようでした。これまで何回繰り返し読んだか分かりませんが、「北の海」を読み終わると、子どもの頃、夏休みが終わったような気持ちにさせられました。イヤなことがあったときは、「夏草冬濤」から読み始めます。夏休み真っ盛りの気持ちになれるからです。自分の話が長すぎました。すみません。

【あらすじ】

 洪作のところにいとこの唐平がやってきます。二人はあまり顔を合わせることがありません。小学校が違うことと、唐平の父親が気難し屋の校長だからです。唐平は洪作に棚場のじいちゃんのところに行こうと誘います。父親に言われたからでした。二人の父親の父でした。このじいちゃんは、シイタケの栽培の研究に従事していて、シイタケ伝習所を開き近隣の若者にシイタケの栽培を指導したり、書物を出したりしている人で農商務大臣から功労賞をもらうようなじいちゃんでした。唐平は、そこに父親の用事で行く途中でした。洪作は、行くことを渋ります。あまり親しくない唐平と出かけたくないからでした。でも、唐平は、洪作の学校の校長でもある父親が洪作に棚場のじいちゃんのところに行って作文を書くよう伝言されたと言います。洪作はしぶしぶ同行します。掘っ立て小屋のような建物に到着します。じいちゃんは留守でした。二人は小さい建物の縁側に腰を下ろしてじいちゃんを待ちます。洪作は、そんな木々と同じような素朴で孤独な生活をしている祖父に思いを馳せます。唐平は、じいちゃんを探しに行き一緒に戻ってきます。じいちゃんは、孫たちに椎茸飯を食べさせようと台所に行きます。そこに、じいちゃんと同居する若者の粂さんがやってきます。粂さんは二人を椎茸栽培しているところに連れていき、栽培方法を解説します。家に戻るとじいちゃんが待っています。じいちゃんが言います。わしの家は、昔から椎茸作りをしていたらしい。椎茸作りの血が流れているからわしも椎茸を作るようになったんだ。お前たちにもその血が流れているんだよと言います。洪作は、じいちゃんの子どもであるはずの伯父が校長先生になったことを疑問に思い、なぜ伯父ちゃんは校長先生になったのか聞きます。じいちゃんは答えます。仕事は自分の一番好きなものをやればいい。伯父ちゃんは、教育の仕事が一番立派な仕事だと考えたんだ。役場へと止めることが一番立派な仕事だと思ったら役場へ勤めればいい。洪もおなじじゃ、と言います。洪作は、それを聞いて自分は親戚のなかでこの祖父が一番好きだと思った。そしてこの祖父を一番尊敬すると思った

【問題】

 傍線部の「洪作は、それを聞いて自分は親戚のなかでこの祖父が一番好きだと思った。そしてこの祖父を一番尊敬すると思った」とありますが、その理由を説明しなさい。

【解説】

 洪作のおじいちゃんは、シイタケの研究を続けています。農商務大臣から功労賞を取るような立派な人なのですが、自分の考えを息子や孫に押し付けることはありません。自分が好きで選んだ職業を尊重します。素朴な掘っ立て小屋に住んでシイタケの研究に没頭しています。一方で、この物語に出てくる洪作の他の親戚は校長先生や唐平だけです。校長先生は、完全に大人目線で洪作にじいちゃんのところに行き、作文を書くように言いつけます。シイタケ研究の権威になっているにも関わらず素朴な生活を続け、自分の考えを押し付けることなく人々の考えを尊重します。この物語に出てくるじいちゃんは、今でも尊敬されるに違いありませんね。

【解答例】

 シイタケ研究の権威になっているのも関わらず偉ぶることもなく素朴に生き、自分の考えを押し付けることもなく各自の考えを尊重するじいちゃんに対し、洪作は人間的な大きさを感じ好印象を持ったと同時に尊敬の念を抱いたから。

 

井上靖  #しろばんば  #人間的度量  #他人の尊重